スペインポッゾで練習中の杉匠真くんの記事がWindsurfingMAGAZINEで紹介されました。
杉匠真、石井孝良、白方優吏、橋本洋、
日本のユース in ポッゾ
PWA WORLD TOUR 2017
EVENT_04 / Wave Men #1・Wave Women #1・Youth Class #1
July 09-15 / Gran Canaria Pozo Izquierdo, Spain
本場で本物と闘うということ
今年も日本のユース世代が『PWA W杯』で世界への挑戦を続けている。先日スペイン・グランカナリア島のポッゾで行われたウェイブパフォーマンスの開幕戦でも、四人の若手が確かな手応えを掴んだみたいだ。
これまでにも世界を目指した日本のウインドサーファーはもちろんいる。だがユースクラスに属する若いうちからPWAワールドツアーに継続的に参戦した選手はいなかった。彼ら四人は、そういう意味で日本で初めてのコンペティターであり、開拓者であるといえる。彼らの活動報告に触れるたびに、野茂英雄や三浦知良や久保建英(バルセロナの下部組織でプレーした経験を持ち、15歳でU-20W杯の日本代表に選出されたサッカー選手)らの名前が浮かんでくる。つまり勝手に大きな期待を膨らませることになる。
彼らは今年ポッゾの大会が始まるだいぶ前から現地に前乗りし、大会が終わったあともそこでトレーニングを重ねている(現在橋本洋は次のW杯会場であるフェルテベンチュラ島に移動したみたいだ)。そんな選手もいなかった。日本ではウェイブといえばマウイ、と考えるのが当たり前の思考回路だったから。
マウイ・ノースショアのホキーパビーチは「ウェイブの聖地」と言われている。
大きな波が立ちやすく、その波に対してサイドショアで吹き付ける貿易風は、よりダイナミックなダウン・ザ・ラインを可能にするからだ。そしてそこでの可能性を広げることことは、世界に通じる道を拓くことにつながる。それは今でも変わらないひとつの道だ。しかし道はそれだけではない。
ホキーパは「ウェイブライディングの聖地」ではあるけれど「ウェイブパフォーマンスの聖地」ではない、という考え方もある。ホキーパは「波乗りの聖地」ではあるけれど、それだけにジャンプやトリックを合わせた競技としての「ウェイブパフォーマンス」は馴染みにくい。従ってホキーパだけで練習を重ねても、世界一は獲りにくい。
だから彼らはポッゾにいて、そこでトレーニングを積むことを重視しているのだろうと思う。
そこにはホキーパのような大きな波は立たない。強風が吹き荒れ、海面もラフになることがほとんどで、ダウン・ザ・ラインに適したフェイスを見つけるのは難しい。風向もホキーパや御前崎とは逆のポートの風(海に向かって左から吹く風)だから、その風に乗ることに慣れるのにも時間がかかる。
そこは日本人にとって気持ち良くウェイブを楽しむのが困難なポイントだといえる。
しかし世界のトップコンペティターが集まる「ウェイブパフォーマンスの聖地」であることは間違いない。
だから彼らはそこにいる。そして既に世界のトッププロ、トップアマと一緒に海に出ることを当たり前のことにしている。今大会のトップトーナメントでは、ダブルフォワードや高いバックループ(ワンハンドやワンフットのオプション付き)やプッシュフォワードが、まるで規定演技のようにメイクされていたわけだが、それも当然のこととして受け入れ、既にトライを重ねて、実際にメイクした技もあるという。
四人はともに「負けられない」と鎬を削り合いながら、純粋に世界一を目指している。
日本選手の中にそういう状況が生まれ、日本のウインド界に希望が膨らんでいる。
何より心強いのは彼らのなかに、ある場合には言い訳にもつながる「苦手意識」みたいなものがないように思えることだ。彼らは既にポートの風も当たり前の風にしている。波乗りもジャンプもトリックも「ウェイブパフォーマンス」のフロー(流れ)の一部として認識していて、どこにも壁を作っていないように見える。これまでの日本選手が越えるのに苦労していたいくつもの壁を、すでにブレイクスルーしているように見えるのだ。
今大会における彼らの足跡は以下の通りだが、これは文字通り未来に続く足跡に過ぎない───
▶︎杉匠真(すぎ・たくま、15歳。大会出場時は14歳)=UNDER 14-15クラス3位。
去年は2位だった。だから表彰台には立ったけれど「悔しい」。そういう若者が日本に出現したのだ。
▶︎石井孝良(いしい・たから、16歳)=UNDER 16-18クラス6位。
この年代における一年の差は大きい。一年のうちに心技体ともに急速に成長する。その度合いは人それぞれだが、この一二年のうちに彼がこのクラスを制する可能性は大きいだろうと思われる。その勢いをもってトップトーナメントに参戦すれば、例えば2011年に17歳でユースの王座と世界王座を同時に獲得したフィリップ・コスターなど、本物のトッププロが辿ったのと似たような道を歩み始めることができる。
▶︎白方優吏(しらかた・ゆうし、21歳)=PWAのトップトーナメントに初参戦。シングル・イリミネーション(最初のトーナメント)ダブル・イリミネーション(敗者復活戦)ともに初戦敗退。だが二度も世界最高峰での真剣勝負を体感した。少なくとも今の自分に足りないものの何割かは具体的に把握できたに違いない。それは大きな成果だ。明確な目標は選手を活性化させ強くするものだから。
▶︎橋本洋(はしもと・ひろし、21歳)=今回は大会には出場せず、観戦とトレーニングをリンクさせていた。確かなイメージをできるだけタイムラグなく実践に移し、脳や身体に最先端の信号を送り続けた。他の三人に遅れをとるわけにはいかない。来年が勝負だ。
───世界のリングにおけるこれからの彼らの闘いが楽しみですね。思いっきりファイトしてください。
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