ウェイブとフリースタイルで準優勝

12月16、17日御前崎ロングビーチで行われたコールドブリーズプロアマトーナメントでマリーンブルーのプロライダー杉匠真(中3)がウェイブとフリースタイルともに準優勝しました。

Windsurfing-MGZより

コールドブリーズ御前崎、今期初戦で日本のウェイブが激変

コールドブリーズ御前崎、今期初戦で日本のウェイブが激変

JWA JAPAN TOUR 2017-2018_FREESTYLE #3 / WAVE #1
Cold Breeze Pro Ama Tournament 2017
2017.12.16-12.17_Long-Beach, Omaezaki, Shizuoka
板庇雄馬、日本初のゴイターでパーフェクト10
All Photo & Movie by JWA_Tetsuya Satomura

Yuma Itabisashi(J-15)

Yuma Itabisashi(J-15)

12月17日、快晴・強風・風波の御前崎ロングビーチ。そこで日本選手が試合でゴイターをメイクするのを目撃した。
(※ 板庇のパーフェクト“ゴイター”=下に掲載したJWAの動画に収録 / 5:13〜)
おそらく日本で初めてのことだ。かつてのウェイブ番長石原智央からJ-15のセイルナンバーを受け継ぎ、今や日本のウェイブ若大将と言われる板庇雄馬がこの大会で決めたのだ。パーフェクト10。ジャッジは歓声を上げ、その演技に満点をつけた。そして勢いづいた板庇は旋風となった。その後のヒートでも、これも世界レベルのグースクリューを決め、ギャラリー、ジャッジ、選手の垣根を吹き飛ばし、そこにいた全ての人々を驚かせて、会場をひとつにした。

石井孝良もゴイターを決めた(※ JWA動画 / 8:14〜)。そしてガッツポーズ。俺もいるぜ・・・ですよね、と周囲を納得させる演技をした。また前日のフリースタイルで準優勝した杉匠真は、この日のウェイブでも準優勝、日本一オールラウンドなアクションライダーであることを証明した。

板庇雄馬は11月にマウイで行われた伝統の『アロハクラシック』でクォーターファイナルに進出、世界の有名選手と鎬を削って9位タイの成績を残した。もうすぐ(12月24日に)26歳になる。まだまだ若いが、そのパワフルでワイルドなスタイルはすでに「外人並み」で、もはや「日本の若大将」の枠なんかにはハマり切らない存在になっている。
彼が目指しているのは当然「世界」だ。その志がいま動きにつながり、自信につながり、右肩上がりで成長している。
そしてその姿は、おそらく次に続く若手たちを大いに刺激してもいる。板庇は「マジで世界を目指す(そして日本の若手をも牽引する)(日本に稀有なスタイルの)日本の若大将」になっている。

Takara Ishii(J-20)

Takara Ishii(J-20)

石井孝良(16歳)と杉匠真(15歳)は、すでにユースクラスでは世界レベルだ。というか、二人は今年の『アロハクラシック』でユースのトップを争い、石井が優勝、杉が準優勝という結果を残した。世界のファイナルを日本人対決にするという、夢のようなストーリーを現実にしたユースクラスのトップの二人だ。

石井のライディングには、同じRRDチームのアレックス・ムッソリーニを彷彿させるところがある。しなやかでタイミングが良く、波とのシンクロ度を高めることで、パワーを増大させるスキルに長けている。さらに特筆すべきはそのあとで、石井は増大させたパワーを最後にソフトに分散させ、上手に処理する術を身につけつつあるように見える。
それはもしかしたら、世界最高のフットボーラーであるリオネル・メッシが、世界最高レベルの高速パスをワンタッチでシュートポジションに収めるような、そんなしなやかさに似ているかもしれない。もちろん両者のクォリティには隔たりがある。だが少なくとも彼のライディングを見た僕の脳内に、そんな思いと「ダイナミズム」という言葉がよぎったのは確かなことだ。

Yuki Ikoma(1150)

Yuki Ikoma(1150)

ちなみに今回アマチュアクラスで4位、プロクラスでも7位になった生駒勇樹君(中学三年生)のライディングには石井に似ているところがある。僕は彼のあるライディングを風上側から見たのだが、彼の身体はボートと一体化して、波のカール部分と同じ軌道を描いて着水した。彼はそのとき、波が最もパワフルになる一瞬に溶け込んでいた。
石井もすでに次の(さらに)若い世代の「先生」になっているのだろうと思う。
そういう好循環が日本のウェイブ界に生じているのだ。

Takuma Sugi(J-723)

Takuma Sugi(J-723)

杉は変幻自在だ。フリースタイルでもすでに日本のトップの一人である彼は、見ているこちらに「何でもできるんじゃないか?」「これからどうになだってなれるのではないか?」という印象を与える。「実際新しい技をすぐにマスターしてしまう」とは、杉をよく知るあるプロ選手の言葉だ。しかし今回、杉は前日に行われたフリースタイルでもこの日のウェイブでも優勝することはできなかった。結果はW準優勝。たいしたものだ。当人は残念だろうが、それはそれで良かったのではないかという気もする。彼は自分のブログで言っている。
「悔しい気持ちもありますが、もっと練習したくなりました。ジャンプのバリエーション、高さ、難易度、ウェイブの3D系など、練習することが一杯です。次は絶対W優勝します! そのために日々の練習をコツコツ頑張っていきます」
言うまでもないことだが、杉はまだ「ベスト」ではない。ひとつの「ベスト」に辿り着いて、そこでなんとなく落ち着いてしまうべきでもない。自分のベストを探し続け、変化を続けて、ベストを更新できる可能性をどこまでも追求してほしいと勝手に思う。

Norio Asano(JPN-25)

Norio Asano(JPN-25)

優勝したのは日本のスラロームキング、浅野則夫だ。浅野はやっぱり速かった。セイルに風が入ったときのスピードは凄まじく、そのスピードでスラロームのような角度で風上側へと上っていき、コンテストエリアのいいところを使い切った。その選波眼も特別で、いい場所から波に乗り、風下に逃げながらブレイクしていく波より速く走って、三発四発と何度もリップを破壊した。ときには波がブレイクしたエリアを瞬間的に突破して、次のセクションへとラインをつないでみせたりもした。そのスピードとシームレスな演技構成は浅野ならではのものであり、浅野は最初から最後までそのスタイルを見事に表現することで、相手にプレッシャーをかけ続けた。

浅野との対戦で若手の誰かが爆発すれば、結果は違うものになっていたかもしれない。でも結果的に浅野の前では誰も爆発できなかった。別の言い方をすれば、浅野に対した若手たちは、そのヒートのなかで爆発するために必要な、いい波といいブローの組み合わせに恵まれなかった、ということになるのかもしれない。そこに大事なことがきっとある。自らの導火線に火を点けられるコンデションの幅を広げること。それが彼らがネクストレベルへ達するための必須条件のひとつになるのだろうという気がする。

いずれにしても、杉、石井、板庇らの若手の活躍によって、日本のウェイブコンペに見られる景色は変わった。
彼らはゴイターやグースクリューやワンフットバックループなど、世界の技をそこに持ち込んだだけでなく、これまでにもあった技の全体的なクォリティを向上させることにも貢献した。選手の誰もが普通の技では勝てないと思った。だからバックループに高さを出した。フォワードループをストレートに回ろうとした。ダウン・ザ・ラインのスピードを限界ギリギリまで上げてエアーをメイクしようとした。
若い彼らが、これまで閉塞感に満ち満ちていた日本のウェイブコンペに風穴を開け、古い舞台をぶち壊したのだ。
それが今大会で一番重要な出来事であったろうと思う。日本のウェイブのステージは、これから彼らを中心に再構築されていくことになるだろう。それが本当の意味で世界につながる舞台になることを期待して、今後の成りゆきを見守っていきたい。みなさんもご一緒に。きっと面白いことになりますよ。(文中敬称略)

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